考えを文章で伝える練習帳

考えを文章で伝える練習帳。文章を書く習慣を付けたいです。

逆説の日本史(井沢元彦)

7巻まで読了。8巻読み途中。マルクス史観皇国史観ではない、公正な史観を謳っているが、その実態は"井沢史観"とでもいうべきもので、私からしたらどれも似たり寄ったり。歴史上の人物、或いは出来事に評価を付けるためには、"ものさし"が必要なわけで、"万人ウケするものさし"が存在するかのごとく論を展開するのは明らかにミスリードだ。例えば織田信長にしろ、田沼意次にしろ現代での評価は高いが、それは現代が資本主義社会だからであって、もしこの先日本の体制が変わったら"ものさし"も代わり、明治維新後や第二次大戦後のように歴史学者によって歴史の再評価が行われるはずだ。ぶっちゃけ資本主義社会なんてスケールの大きいものさしを使う必要もない。いわば"俺史観"を個人個人で持っていればいいだけのこと。史観を皆で共有する必要があるかどうかはまた別の問題。国家としてある程度の共通認識は必要だと思うけど、宗教の勧誘と同じで、個人的正義(本人にとっては唯一絶対なのだけど)の押し売りは迷惑以外の何者でもない。


前総理大臣がどんな人であったか、評価はどうであったかでさえ、日本全体で共通見解が得られないのに、それより遥かに情報で劣る過去の人物や出来事に対して共通認識なんて得られるわけがない。時間が経てば冷静で公正な評価が出来るというのは思い上がりも甚だしい。そこには必ず何かしらの"ものさし"が存在して、それに基づく評価しかできないのだ。世に出ているこの手の本は個人的正義に基づく作者の"俺史観"を発表する場であって、作者が自己正当化を計るのは当然だ。一々私の史観では〜と書かれてはくどいという話もある。個人的には「この本はは○○史観を正当化するために書かれています」と最初に書いてくれるだけで大分読みやすくなるしミスリードも減ると思うのだが、そのような本には出会ったことがない。